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本記事は、内閣府 公益認定等委員会事務局にて公益認定申請および新規認定を担当されている伊藤憲一氏にご執筆いただきました。
今回はご好評いただいている寄稿連載の番外編としてお届けします。
私は内閣府において公益法人の認定申請を担当しており、所管する新規の公益認定申請案件について日々審査業務に携わっています。
7月10日、公益認定等委員会から、ある公益認定申請案件について答申が公表されました。
この答申は、公益認定基準に適合すると認める一方で、通常の答申ではあまり見られない形で、認定後の運営上の留意点や監督の必要性についても言及された内容となっていました。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------上記諮問に係る別紙記載の法人については、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)第5条に規定する公益認定の基準に適合すると認めるのが相当である。
なお、当該法人の行う奨学金事業は、企業等の寄附者ごとに奨学金を設置するものであることに加え、設立者(奨学金プラットフォームの運営を主な事業とする営利企業)の事業内容との近接性を有し、人的関係性も深いことから、委員会においては、奨学生が寄附者等の主催するイベントへの参加等の付加的な負担を事実上強制されてはならないとの意見、当該営利企業との間で事業を明確に分離し、特別の利益供与が生じない形で法人運営が行われることが不可欠であるとの意見があり、認定後に設置される奨学金の内容等を把握し、必要な場合には速やかに監督処分等を講じるべきとの意見があった。
当委員会としては、奨学生に対する不当な負担の排除といった事項が確保された上で、営利企業と事業が明確に分離されることを前提に認定相当とするものであるが、これが継続的に確保され、その趣旨に反する奨学金の設置などが行われることのないよう運営状況等を注視する必要があるため、当該法人に対しては、当分の間、認定後に設置される奨学金の事業内容等について、奨学金の募集開始前に報告するよう求めることとする。 出典:公益法人information
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もちろん、個別案件の審査過程や委員会での議論の詳細についてはお話しできません。
しかし、公表された答申書を読むだけでも、これから公益認定を目指す財団法人、とりわけ奨学金事業や基金型事業を行う財団にとって、多くの示唆が含まれているように感じました。
今回の答申で特に印象的だったのは、認定相当という結論そのものも重要ですが、それ以上に印象的だったのは、
・奨学生に対する不当な負担を排除すること
・営利企業との事業を明確に分離すること
・特別の利益供与が生じない法人運営を行うこと
・認定後の事業運営を継続的に確認していくこと
という点が強く意識されていたことです。
答申書では、奨学生が寄附者等の主催するイベントへの参加などを事実上強制されてはならないことや、営利企業と事業を明確に分離することが不可欠であることが述べられています。
さらに、認定後に設置される奨学金についても内容を把握しながら運営状況を注視していく必要性に言及されています。

近年、企業が社会貢献活動の一環として財団を設立する事例が増えています。
これは非常に望ましい流れですし、民間資金が公益活動へ向かうことは公益法人制度が目指してきた方向性の一つでもあります。
その一方で、
・企業と財団の役割分担
・意思決定の独立性
・利益相反管理
といった点については、従来以上に説明責任が求められるようになっていると感じます。
特に設立企業の本業と公益事業との関係が近い場合には、
「独立している」だけでなく、「独立して見える」こと
も重要になるでしょう。
奨学金事業は、多くの公益財団が取り組む代表的な公益目的事業です。
だからこそ、その目的がぶれてはいけません。
学生支援を目的とする以上、
・イベント参加
・広報協力
・特定活動への参加
などについて、受給者が不利益を恐れて従わざるを得ないような仕組みであってはならず、制度設計の段階から、「何が義務で、何が任意なのか」を明確にしておくことが、受給者の保護にもつながります。
マンション型財団とは、一つの財団の中に複数の基金を受け入れ、それぞれの寄附者の意向に応じた奨学金や助成事業を展開する仕組みです。
このモデル自体は従来から存在しており、有効な社会貢献の仕組みでもあります。
しかし今後は、
・どのような基金を受け入れるのか
・誰が選考するのか
・どのように利益相反を管理するのか
・寄附者との関係をどう整理するのか
といった点について、より高い透明性が求められるようになるのではないかと感じています。
制度上問題がないことはもちろんですが、
「第三者に説明できるか」
という視点がますます重要になるでしょう。
今後のマンション型財団では、公益性をどのように確保し、寄附者との適切な距離感をどのように維持するかが、これまで以上に重要なテーマになっていくのではないでしょうか。
公益認定の実務に携わっていると、制度は年々進化していると感じます。
かつては法令適合性が主な論点でしたが、現在はそれに加えて、
ガバナンス、独立性、透明性、受益者保護
といった観点が、委員には、より重視されるようになっていると感じます。
公益法人制度は、単に認定を受けるための制度ではなく、社会からの信頼を得ながら公益活動を持続させるための制度です。
今回は番外編として、7月に公表された答申から感じたことを整理してみました。
伊藤 憲一 (公益認定等委員会 事務局 公益法人行政担当室 / 公益法人新規認定担当)
2011年4月から2014年3月まで、また2019年7月から現在まで、内閣府公益認定等委員会事務局に在籍し、通算約10年にわたり公益法人制度に関わる業務に携わってきました。2025年3月までは、公益法人の定期提出書類の確認や変更認定、立入検査を中心に担当し、同年4月からは新規認定総括として、公益認定申請に特化した業務を担っています。
これまでの伊藤氏による連載記事は、ぜひこちらからご覧ください。
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